遼金西夏史研究会 - Society for Liao, Jin and Xi-xia Studies

 

第16回 遼金西夏史研究会大会 報告要旨

大西啓司(龍谷大学大学大学院修了)

『天盛旧改新定禁令』に見られる「抄」編成規定-仁宗期(1139~1193年)を中心に-

 

 西夏王国は、15歳以上の男子が原則として全員兵役に就く体制をとっていた。また、軍事活動の際は、部族単位での軍事組織を編成した。そのため、西夏王国の軍事体制を解明することは、西夏王国の部族制度、西夏王国社会の実態を知る手掛かりになると指摘されている。

 西夏王国に於ける軍事組織の最小単位は「抄」と呼ばれる単位である。1つの「抄」は、正規兵「正軍」一人と複数の「輔主」、「負担」により構成された。そして、複数の「抄」が構成する「軍」を小部隊長「首領」が統率した。それでは、西夏王国に於いてはどのように「抄」が編成されていたのか、その編成はどのように国家によって規定されていたのか、詳細は不明である。先行研究の中で「抄」に言及する際には、「抄」に関係する史料を羅列し、「抄」の概要を述べるに留まっている。

 本発表では、仁宗時代(1139~1193年)に制定された法典『天盛旧改新定禁令』(以下、『天盛』)巻6「抄を分ける、合わせる、供給する、削除する門」の「抄」編成に関する規定を分析することにより、仁宗時代に於ける西夏王国の「抄」編成の具体像について解明し、西夏王国政府が「抄」をどのように編成しようとしていたのかを明らかにしたい。

 西夏王国の諸制度を前近代東部ユーラシア諸国家の制度と比較し、それら諸国家との共通性、特異性がどの程度あるのか、他分野の研究成果を吸収しながら検討を進める必要があることは先行研究によって指摘されているが、「抄」という西夏王国に特有の制度を検討することも、そういった問題意識を検討していく基礎的作業となろう。


 

 

inserted by FC2 system

inserted by FC2 system