遼金西夏史研究会 - Society for Liao, Jin and Xi-xia Studies

 

第16回 遼金西夏史研究会大会 報告要旨

酒井規史(早稲田大学)

金元時代の道士の称号

 

 道士の称号には、その経歴や地位が反映される。一般的に道士の称号といえば、朝廷からあたえられる師号がよく見られるものである。それに対し、道士の集団内部での地位(法位)を示す称号が存在する。後者のタイプの称号は、道士の宗教活動を知るための貴重な手がかりとなる(以下、称号という場合は後者のタイプをさす。)

 金元時代の華北地域における道士の称号は一般的な伝世文献にはほとんど見えないものの、石刻資料に記されている場合がある。それらの称号をみると、北宋時代の道士の称号と同じような形式を持っていることがわかる。

 北宋時代の道士は、経典や符などを伝授されることによりその法位を上げていった。また、北宋末期の徽宗時代には天心正法や雷法といった新しい道術も道士たちの間で伝授されるようになった。道士はその修行の経歴に応じて、新しい称号を得ていったのである。北宋時代と金元時代で同じ形式の称号を持つ道士がいるということは、その修行の内容も類似したものであったことを意味している。

 金元時代の華北地域の道教といえば、一般的に全真教・太一教・真大道教という新しい流派、とりわけ全真教がすぐに想起されよう。しかし、それらの流派の勢力がさかんになる中で、北宋時代からの流れをくむ道士たちも活動していたと推測できるのである。

  本報告では、道士の称号を手がかりにして、北宋滅亡後の華北地域の道士たちの動向を検討する。また、北宋時代 の道教と金元時代の華北地域の道教との継承関係についても考察することにしたい                                                       


 

 

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