遼金西夏史研究会 - Society for Liao, Jin and Xi-xia Studies

 

第17回 遼金西夏史研究会大会 報告要旨

山田俊(熊本県立大学)


所謂金朝道教「眞元派」に就いて



 金朝の道家道教研究は儒教・仏教に比べると遅れていると言わねばならない。それは、この時期の道教研究が、金朝後半から元朝初期にかけて成立した太一教、真大道教、全真教などに集中してきたためと思われる。しかし、これら新規道教誕生の背 景を探るためにも、金朝全体の道家道教思想の解明が不可欠であることは言うまでもない。近年の中国側の研究では、石刻資料等を用いた金朝史研究が精力的に 進められているが、道家道教研究に限って言えば、その数は依然として少なく、伝世文献資料との付き合わせも不十分である。石刻資料等の有効活用のために も、伝世文献資料に依る検討は万全を期さなければならない。
 ここで検討を試みる金朝道教「真元派」とは、相互に関連性が有ると目される経典群の 撰述母体に対して与えられた名称で、論者が確認し得た限りでは、Isabelle Robinet氏が初めて「école Zhenyuan」と称し、続いて中国の王卡氏が提唱したものである。その後、『道蔵通考』も「"True Origin"(Zhenyuan真元)school」の名称を用いている。又、張勛燎・白彬兩氏は、金朝の「真元派」に関しては王氏の立場を支持しつつ、そのプロトタイプである「太上真元派」が北宋に成立していたとする。王卡氏はこの「真元派」の活動時期を金〜元期と見ており、それが事実とすれば、金朝道教の一つの具体例となり、看過出來ないと言える。本報告では、この「真元派」に就いて考えてみたい。
 


 

 

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