遼金西夏史研究会 - Society for Liao, Jin and Xi-xia Studies

 

第19回 遼金西夏史研究会大会 報告要旨

荒川慎太郎〔東京外国語大学〕
「プリンストン大学所蔵西夏文法華経と西夏文の諸特徴」

 報告者は2018年11月、米国プリンストン大学図書館に所蔵される西夏文法華経に関する著作(『プリンストン大学図書館所蔵西夏文妙法蓮華経―写真版及びテキストの研究』創価学会・東洋哲学研究所)を刊行した。本発表はこれに基づき、プリンストン大学所蔵西夏文法華経の紹介と、それを資料とした西夏語の研究に関するものである。西夏文『妙法蓮華経』は鳩摩羅什訳漢文の西夏語訳である。刊本・写本が残存するものの、完全な形で残るものはない。西田2005『ロシア科学アカデミー東洋学研究所サンクトペテルブルク支部所蔵西夏文妙法蓮華経写真版 (鳩摩羅什訳対照)』において、ロシア科学アカデミー東洋文献研究所所蔵西夏文法華経が美麗な図版とともに公刊され、ロシア所蔵本の全容が明らかになった。一方、米国プリンストン所蔵本は、これまで詳細がわからずテキストの研究も俟たれていた。拙著は、世界で初めて、同本の美麗なカラー印刷による図版とともに解題・言語学的研究を示したものである。同所蔵本は「巻四」のみであるものの、その完本で、ロシア所蔵本に残存しない部分も残る。また、ロシア所蔵の西夏文・漢文法華経にない仏図を有し、資料価値は高い。
 本報告では、ロシア所蔵本とのテキストの比較、仏図とその中にある西夏文の読解による、「仏図に描かれたエピソード」の紹介に続き、「西夏語の双数接尾辞」などの研究に、西夏文法華経がいかに有用であるのかなどを述べる。


 

 

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