第19回 遼金西夏史研究会大会 報告要旨
王達来〔内蒙古大学〕「契丹の叉手礼について」
叉手(さしゅ)とは,お辞儀作法の一つであり、神道、仏教に限らず、この作法が民衆に広がり、中国をはじめ東アジア漢字文化圏に伝わる所作である。しかし、出土壁画に描かれている人物から見ると、北方遊牧民にもこのような叉手(俗法)が確認されている。とりわけ、遼墓壁画には多く見られる。叉手礼の流行時期について、宋元時代以降と主張する学者もいる。この説は不妥当であり、再検討する必要がある。ここで、筆者は叉手の意味、かたちをまとめた上で、遼墓壁画に見られる人物の造形、叉手の方式を分類する。また、遼代壁画墓における型式学研究の成果をもとに、契丹人と漢人の叉手作法の差異およびその意義にも兼ねて論じたい。