遼金西夏史研究会 - Society for Liao, Jin and Xi-xia Studies

 

第22回 遼金西夏史研究会大会 報告要旨

河内春人〔関東学院大学

 「刀伊の入寇に見る日本の対外関係」

 刀伊の入寇とは、1019年(寛仁3)に北東アジアに勢力を形成しつつあった女真族が、対馬・壱岐・北九州沿岸を襲撃した事件である。それは異民族襲撃にとどまらず、高麗による略奪民送還から派生した外交、及び現場における個人の私的行動と同時期に偶発的に生じた漂流案件に対する警戒など様々な事態を引き起こした。当事件は、武士の成立論と関わって九州武士の対応などの視角から検討されているが、中央朝廷の対処やその根底にある貴族の国際意識については十分な検討がされているとはいい難い。

 そこで、本報告では次の点に注目する。それは、朝廷の貴族たちが刀伊の実態の追究についてくり返し議題に取り上げていることである。特に捕虜として捕えた刀伊が全て高麗人であったことから高麗の策謀を疑い、その嫌疑が晴れた後も女真と刀伊の同一性を問題とすることから、公卿等が情報の精度を高めようとする意識が読み取れる。また、先例として寛平期の新羅襲撃事件が意識されている点も注目される。11世紀初頭の日本が東北アジアの動向をどのように理解しようとしていたのか追究したい。


 

 

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