遼金西夏史研究会 - Society for Liao, Jin and Xi-xia Studies

 

第23回 遼金西夏史研究会大会 報告要旨

「西夏人の身分から考える軍事体制」

小野裕子(岡山大学大学院社会文化科学研究科博士後期課程)

 西夏の軍事体制は、部隊を率いる首領や軍を構成する軍抄制度など、明らかになっている点が多い。しかし、軍事体制研究の課題の中でも、西夏の社会構造が、非常時および平常時の軍事制度にどのように転化していたか、という点については、依然議論の余地がある。本報告では、西夏人が持っていた官tsjiir1・職tśju1・軍gja1という身分に着目し、西夏中期(12世紀)に成立した西夏語文献『天盛旧改新定禁令』巻4の内容から、①辺防を担う正統以下の職が担った具体的な職務と階層、②軍gja1とは、部族の秩序を反映しつつ西夏政府に任命される「(小)首領・房将・尾迫」といった軍事上の身分を指すこと、を明らかにする。また、明らかになった身分の様相が、『天盛旧改新定禁令』巻5においても該当すること、西夏語法典『亥年新法』が編纂された西夏末期(13世紀)においても維持されていた点を指摘する。本報告の内容は、東アジア世界と中央ユーラシア世界の接壌地帯に存在した西夏を、周辺諸国家と比較・相対化していく上で、必要な基礎研究となるものである。


 

 

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