遼金西夏史研究会 - Society for Liao, Jin and Xi-xia Studies

 

第23回 遼金西夏史研究会大会 報告要旨

「文武王碑にみえる新羅の国際認識」

植田喜兵成智(学習院大学)

 

 本発表は、文武王碑を分析することによって、その史料的性格および碑に込められた新羅の国際認識を明らかにしようとするものである。慶州で発見された文武王碑は、18世紀にはその存在が知られていた2片の断碑である。現物は、しばらく行方不明であったが、1961年、2009年に再発見された。

 本碑の主人公である新羅の文武王(在位661~681)は、いわゆる新羅の三国統一を成し遂げた君主で、朝鮮の歴史上、重要な人物でもある。当然、本碑は彼の業績が記されているわけであるが、断碑であることから文意の不明瞭なところや、原碑が磨滅して文字の判別ができないところがあり、これまで碑文全体の内容は充分に明らかになっておらず、一部の語句のみ注目される傾向にあった。

 本発表では、20世紀初頭に作成されたと推定されるソウル大学校中央図書館古文献資料室所蔵の拓本を調査することによって、現在の原碑からは確認できない文字の判読を行い、碑の全体像を復元し、碑文がそもそも何を伝えようとするものであるのかを明らかにする。

 また同時に、文武王碑の性格を追究する。従来、単に“陵碑”として捉えられてきたが、そうした性格規定ではとらえきれない面をもち、新羅の国際認識が反映されたものであるとみられる。特に、本碑には7世紀後半の新羅の三国統一過程について記されている箇所があり、新羅の文武王だけでなく、唐、百済、高句麗も登場する。そうした新羅の対外認識がうかがえる記述を分析し、新羅が東アジア諸国との関係をどのように認識していたのか、自らをそうした国際関係のなかでいかに位置づけようとしていたのかについて検討していく。


 

 

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