遼金西夏史研究会 - Society for Liao, Jin and Xi-xia Studies

 

契丹仏教における仏宮寺木塔納入品「発菩提心戒本」の研究

龍谷大学大学院 仏教学専攻 博士課程三年生

王若賓

 

【要旨】

 

 本発表は、仏宮寺木塔納入品の「発菩提心戒本」と題されたテキストを取り上げ、翻刻作業に基づいて、相関する仏教学の問題を検討するものである。

 契丹(遼、916―1125)は中国北部で活動していた少数民族の政権であり、その熱狂的な仏教信仰で広く知られている。1974年に中国山西応県の仏宮寺木塔修復中に、仏像内に隠された多数の契丹仏教テキストが発見された。これらのテキストは、契丹仏教の実態を理解するために最も貴重な一次資料と言える。仏教儀礼の解題的な文献である「発菩提心戒本」は、これらのうちの一つであり、長らく無視されていたが、独自な研究の価値がある。

 本発表では、次の三つの問題に焦点を当てる。①本文献には大量の華厳に関連する内容の引用が見られる。これは『應縣木塔遼代秘蔵』の第七十号である文献の特徴と一致している。これによって、契丹仏教の教学的傾向を推測することができる。②「発菩提心戒本」が所在する『應縣木塔遼代秘蔵』の第六八号の文献は、「発菩提心戒本」、「八関齋戒」および「菩薩十無尽戒」(即ち『梵網経』の十重戒)の三つの文献が「合卷」されているものである。文献の構成に基づいて判断すると、契丹仏教の戒律儀式に「菩提心戒」と「梵網経」の十重戒が共に使用されていた可能性がある。③先行研究で常に焦点が当てられてきた澄観撰「菩提心戒本」が契丹仏教の関連文献に影響を与えたかどうかという問題を検討する。


 

 

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