題目：敦煌出土の古チベット語出行択日占文書

 

要旨

　本報告では，A. Stein が敦煌蔵経洞から将来した古チベット語出行択日占（所蔵番号: Or.8210/S.6878） を検討する．出行択日占とは，1ヶ月のうちの各日の外出に関する吉凶を占う占卜法である．この古チベット語出行択日占については，すでにテキスト・訳文は提出されているものの，資料の文献学的処理および歴史学的背景への考察は，今なお十分ではない．

　そこで，本報告では，この古チベット語出行択日占について，敦煌出土資料を中心に漢文の同種資料と比較しつつ，その淵源や資料的価値を考察する．

　その結果，本古チベット語出行択日占は（１）敦煌文書や中原に伝存する漢文典籍資料に確認される漢文出行択日占に淵源をもつこと，そして（２）同時代の漢文占卜資料のみならず，後代の漢文・ウイグル語占卜書と通時的かつ言語横断的に比較考察できる資料であることを明らかにする．

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