第15回 遼金西夏史研究会大会 報告要旨
佐藤 貴保 (盛岡大学):
カラホト出土文献から見た13世紀初頭の西夏の動向
西夏は13世紀初頭、モンゴル軍の侵攻を受けて滅亡した。ただ、西夏はモンゴルに一度の侵攻で滅ぼされたわけではなく、数度にわたる侵攻を受けており、そのたびに西夏側が敗北していた。モンゴル軍の最初の侵攻を受けた敗北した西夏は、次なる侵攻にも備えていたはずであるが、どのような対応をしていたのであろうか。当該時期の西夏の動向については、モンゴル・金・南宋の文献に基づいた対外関係史の研究や、対モンゴル最前線の要塞であったカラホトから出土した数点の文献を解読した研究が発表されているが、西夏側の防衛態勢をはじめとする内情はいまだ充分に解明されているとは言えない。
佐藤はカラホトから発見された文献のうち、行政文書や法令集、仏典の奥書に注目し、荒川慎太郎・小野裕子の二氏と共に科研費プロジェクト「西夏語文献から見た、モンゴル軍侵攻期における西夏王国の防衛体制・仏教信仰の研究」を立ち上げ、それらの文献の解読を進めてきた。モンゴルの侵攻を受ける前に編纂された法令集と侵攻を受けた後に編纂された法令集とでは、国防や軍事に関わる法規定にどのような変化が見られるか、その法規定が実際に運用されていることを行政文書で確認できるか。朝廷の支援を受けて刊行された仏典の奥書にモンゴルの侵攻に関連する内容が含まれていないか、どのような仏典が刊行される傾向があったのか。各プロジェクトメンバーはこのほど研究成果を提示した。
本報告では、各プロジェクトメンバーから示された研究成果を佐藤が取りまとめ、その概要を報告する。