第15回 遼金西夏史研究会大会 報告要旨
鈴木 宏節 (大阪大学):
ゴビの防人
モンゴル国ドンドゴビ県オルジート郡に所在するデル山には漢文銘文が残されている。報告者は、二〇一三年と二〇一四年の現地調査でこの銘文の拓本を採取するとともに、周辺の景観調査を行った。
銘文は唐の年号で紀年されており、唐の霊州からゴビ砂漠をわたってモンゴルに到来した漢人2人によって残されたものであった。彼等のひとりは折衝府に属していることが明らかであり、防人として活動していたことが予想される。
本報告は、この銘文が成立した歴史的背景を唐帝国の遊牧民支配という視点から解き明かそうという試みである。羈縻支配時代におけるトルコ系遊牧民の実態解明に資する史料を提供するとともに、ゴビ砂漠を縦断するルートの究明を目標としている。